Letters|お知らせ
2025/05/12 10:34

日々のなかで、ふと思い出すことがあります。
それは、誰かの声でも言葉でもなく、
光や香りのように、そっと立ち上がってくる記憶。
子どもがまだ小さかったころの背中、
胸元に触れてきた小さな手のぬくもり。
そんな時間を、そっと縫いとめた刺繍の作品です。
ルーベンスの《花輪の聖母子》。
もともと知っていたはずの絵が、
ある日ちがう表情を見せてくれました。
宗教画としての荘厳さより、
どこにでもいる親子の姿に見えて、
わたし自身の記憶が、静かに重なってきたのです。
モノクロに加工した聖母子を中心に、
天使たちは控えめに。
マリアとイエスの頬にだけ、
淡いピンクの色をそっと添えました。
まるで、色のない記憶にだけ残っている、
ぬくもりの痕跡のように。
周囲には、グレーの布に描いた葉の輪と、
ペチュニアの花の群生をビーズとスパンコールで。
「あなたといると心が和む」
そんな花言葉を添えて、静かに包みました。
この飾りは、誰かに祝福を与えるものではなく、
“思い出したくなったとき”にそっと飾るものかもしれません。
子育ての渦中にいる方、
その時間を静かに振り返る方、
そして、かつて抱かれていた記憶を持つすべての人へ。
中央の聖母子像は、
ルーベンスとブリューゲルによる《花輪の聖母子》を加工したものです。
装飾的な花輪や鮮やかな色彩を抑え、
ただの親子の姿として、自分の記憶に重ねました。
この作品が、
“心が少しだけゼロに戻る場所”になれたらうれしいです。
静かで、やさしいひと針として。
−
#AnUnnamedMoment #まなざしの記憶 #ほっとする飾り
